ガダルカナル島の戦い~戦力の逐次投入が招いた悲劇の戦い

ガダルカナル島の戦い~戦力の逐次投入が招いた悲劇の戦い

ガダルカナル島の戦いは、ミッドウェー海戦とともに日本軍の戦況が一変した戦いだ。それまで太平洋戦争を優位に進めていた日本軍だが、勢い任せの作戦を立案・実行したことによって大きく敗戦に傾くことになる。ガダルカナル島の戦いから学ぶ教訓は、多いのではないだろうか。

ガダルカナル島の戦いをわかりやすく解説

ガダルカナル島の戦いとは、西太平洋のソロモン諸島のひとつガダルカナル島で繰り広げられた日本軍とアメリカ軍の戦いだ。第二次世界大戦中の1942年8月から翌年2月まで続いたこの戦いで、日本軍は兵士だけでなく、軍艦や航空機、武器、燃料などを多く失うことになる。そのためミッドウェー海戦とともに、太平洋戦争で日本が敗北を喫することになった大きな原因と言われている。

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ミッドウェー海戦で4隻の空母を失い制空権を奪われた日本は、ガダルカナル島に飛行場を作り、航空部隊を配備する必要性に迫られていた。この飛行場をめぐる日米の戦いこそがガダルカナル作戦だ。
とにかく補給が間に合わず、ガダルカナル島はガ島(=飢島)と呼ばれたほど、飢えやマラリアで死んだ兵士が多かった。

ガダルカナル島の戦いが起こった背景

ガダルカナル島の戦いが起こった背景には、日本軍の勢い任せの作戦が挙げられる。そもそも日本軍の作戦は、太平洋に点在している東南アジアの島々を抑え、日本本土に向かってくるアメリカ軍との戦いを有利に進めるというものだった。

東南アジアを押さえれば、アメリカ軍はアメリカ本土から日本本土まで補給ができなくなり、長距離航海が必要になる。逆に日本軍は東南アジアを拠点としてアメリカ軍を攻撃。戦力を弱体化させ、日本本土付近で一気に壊滅させられると考えていた。

当初の作戦があったにも関わらず、なぜニューギニア・ソロモン方面のガダルカナル島で戦いが起こったのか。そこには以下の要因があるだろう。

日本軍の思惑通りに快進撃が続いた

日本軍は、太平洋戦争の開戦となった真珠湾攻撃からはじまり、マレー作戦、フィリピンの戦いと連勝していた。先述したように、当初は東南アジアの占拠を目的としていた日本軍だが、東南アジアの占拠が思いのほか上手くいったため、軍部ではアメリカ軍を待つのではなく、こちらから積極的に攻撃に出るべきだとの意見も出始めることになる。

そこで次の攻撃目標のひとつとしたのが、連合軍の反抗拠点になると予想されたニューギニア・ソロモン方面だ。ニューギニア・ソロモン方面を占拠することによって、オーストラリアとアメリカの分断を考えていたのだ。

ミッドウェー海戦の敗北とソロモン諸島の制空権確保

先述したように快進撃を続けていた日本軍だが、この快進撃には事前の綿密な研究と兵士の厳しい訓練があった。一方、勢いのままに計画されたオーストラリアとアメリカを分断するという作戦は、事前の用意がまったく足りていなかった。

結果として、日本軍はミッドウェー海戦で大敗を喫することになり、主力空母艦4隻を失うことになる。空母艦を失うということは、戦闘機を飛ばすことができないため、制空権を確保できないということだ。そこで日本軍は「空母艦がないのであれば、航空基地を建設して制空権を確保すればよい」と考え、その建設先としてガダルカナル島が選ばれる。ガダルカナル島を拠点にソロモン諸島の制空権確保を考えたのだ。

日本軍の予想の甘さ

当初ガダルカナル島はイギリス領だったが、第二次世界大戦中だったため、イギリス本土の守りに兵士を投入していた。そのため、イギリス軍の守備兵はほとんどおらず、日本軍は簡単にガダルカナル島を占拠することになる。

日本軍は、アメリカ軍が奪還しに来ることを予想していたが、真珠湾攻撃が成功していたため、アメリカ軍が来るまでまだ猶予があると考えていた。そのため、兵士よりも航空基地を建設するための作業員を重点的に送ることになる。

しかし、アメリカ軍は即座に行動。兵士がほとんどいないガダルカナル島はアメリカ軍によって奪還されてしまうのだ。こうして、航空基地を巡るガダルカナル島の戦いが始まることになる。

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ガダルカナル島には日本軍が建設中だった航空基地がそのまま残る形となった。ガダルカナル島を占拠したアメリカ軍は、日本軍が残した航空基地や施設などをそのまま利用して、日本への反撃を行うことになる。
一方、日本軍はガダルカナル島に兵士を投入し続けるがことごとく敗北。ガダルカナル島への補給物資も航空基地からのアメリカ軍の爆撃によって届かないという事態になってしまい、現地の日本兵には餓死者も多く出た。

ガダルカナル島の戦いの経緯

ガダルカナル島の戦いは以下のような流れになる。

6月5日
ミッドウェー海戦で空母四隻を失う
ミッドウェー海戦で、日本はたった1日にして頼みの空母四隻を全て失う。このために日本は空の戦いで圧倒的に不利になってしまった。
8月5日
ソロモン諸島のガダルカナル島に飛行場の滑走路が完成
ガダルカナル島に上陸した日本軍は飛行場を建設開始。アメリカ軍が上陸を開始する直前の8月5日に滑走路の第1期工事が完了している。
1942年8月7日
ガダルカナル島の戦い勃発
日本軍が飛行場の建設を終えてから2日経過した頃、およそ8000人のアメリカ軍が攻撃を開始。日本軍も守備隊を配置していたものの、その数が少なかったため苦戦を強いられる。
やがて、ガダルカナル島へと上陸したアメリカ軍は日本軍が作った飛行場を占拠、そしてその飛行場はヘンダーソン飛行場と名前をつけて使われている。当然日本軍もこのまま黙って飛行場の占拠を許すつもりはなく、ガダルカナル島の戦いはここからが本格的な始まりとなる。
8月8日
第一次ソロモン海戦
日本艦隊が勝利するが攻め切らなかった。結果的に米軍の輸送船を撃破できずに終わる。
8月18日
一木支隊900名が基地奪還のため夜襲するも全滅
8月10日、大本営は一木支隊(2000名)にガダルカナル島奪還を命じる。18日に上陸した一木支隊900名は敵が2000人程度でかつ弱体だと思っていたが、実際は米軍は13000人おり、ジャングルで待ち伏せされ、四方八方から銃火を浴び殲滅された。

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戦闘艦艇の撃破には成功したが、本来の目的の輸送艦隊への攻撃は中止された。もしここで日本軍が米軍輸送船を倒していたら基地を奪還できる可能性はあった。
アメリカ軍は重火器を含む大量の物資の揚陸に成功し、このために日米は補給に大きな差が開いた。結果的にガダルカナル島の戦いに重大な影響を与えることになる。攻められる時に攻め切らないことがいかに重大なツケを回すことになるか、この後日本軍は身をもって知ることになる。
8月20日ごろ
川口支隊の投入
一木支隊の壊滅後、ガダルカナル島に川口支隊4000人の投入を開始。敵軍の偵察に見つかり一時中断するが、9月7日までに木支隊の第2梯団と共に上陸している。
8月24日
第二次次ソロモン海戦
日本の空母・龍驤と米空母・エンタープライズが大破。これ以降大型輸送船での補給ができなくなり、すばやい駆逐艦を使ったネズミ輸送に切り替わる。
11月10日
第三次次ソロモン海戦
第38師団長佐野忠義中将率いる先遣隊が上陸し、14日には師団主力の輸送が開始。日本軍は制海権の確保と飛行場への再砲撃を目的に第11師団を投入するが、これを防ごうとするアメリカ軍と衝突する。飛行場への攻撃が失敗し、米軍機からの空襲にさらされる結果となる。

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第三次ソロモン海戦では、日本軍の輸送船11隻中6隻が沈没している。1隻は輸送を断念、残りの4隻も島への上陸を強行するが、アメリカ軍の陸と空からの攻撃によって、全て炎上してしまう。こうして補給物資が届かない最悪の結果となったのだ。
12月31日
ガダルカナル島への上陸が不可能と判断し、御前会議で撤退が決定された。
1943年2月1日
1日から7日にかけてガダルカナル島の撤退作戦(ケ号作戦)が行われた。ガダルカナル島に上陸した総兵士数約3万人のうち、1万人が撤退、約2万人の兵士が死亡・行方不明となっている。

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死亡・行方不明のうち、実際の戦闘での戦死者は5,000人、餓死や病死となったのは15,000人と言われている。まさに勢い任せの作戦が招いた最悪の戦いと言えるだろう。

ガダルカナル島の戦いの教訓

ガダルカナル島の戦いは、連勝の勢いに任せて立案、実行された作戦が引き起こした戦いにほかならない。それまでとの戦いとは違い、情報戦の軽視、補給・兵站の軽視が多くの犠牲者を出す結果となっている。太平洋戦争当初の日本軍のように計画性をもった作戦であったのなら、違った結果になっていたのではないだろうか。

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日本軍の補給に関する軽視が浮き彫りになった戦い。冗談のようだが、食料や物資は現地調達するのが半ば当たり前とされていた。

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兵力の逐次投入や、兵站の弱さなど、たくさんの教訓がある。
また、陸軍、海軍の連携の弱さも消耗線を招いた。
  • 戦力の逐次投入
  • 戦略的グランドデザインの欠如

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